気分屋な柴犬の足跡

埼玉県在住/20代/男性

不撓不屈

「どうしたらいいか分からなくなっちゃった」

 

そう言葉にすると同時に涙を流した学生は、

これまでに3,4回ほど僕が就職活動の相談相手をしていた留年生だった。

 

昨年の4月に授業を通じて初めて話した時、

その学生はすでに僕のことを知っていたようだった。

 

のんびりとした性分のようだったが、

就職活動するうえでの軸はしっかりと持っているようで、

いずれ決まるだろうと初めて面談した時には考えていた。

 

それから2,3ヶ月に一度のペースで

僕のデスクにふらっと顔を見せにくるようになった。

 

マイペースながらも就職活動は頑張っているようで、

悩みや不安をこぼしながらも最後はやってみると言い、

事務室を去っていく様子をいつも見送っていた。

 

しかし、今日は様子が違った。

心のバランスが崩れたのだろうか。

 

僕の前に現れた時には既に目に涙を浮かべていた。

 

就職先が見つからない。

卒業も怪しくなってきた。

体調も良くない。

 

とのことだった。

 

それならば、

 

卒業を優先しよう。

体調を整えよう。

それから就職のサポートはいつだって幾らでもする。

 

そう答えることで精一杯だった。

 

その学生は、しばらくして落ち着いたのか、

最後は、うんと頷いて立ち上がり去っていった。

 

果たして今の答えで良かったのだろうか。

 

そもそも4月からこれまで、

自分はその学生と何を話していたんだろう。

誠実に、真剣に向き合ったと胸を張って言えるのか。

 

そう自問自答していると鼻の奥でツンと痛みを感じた。

 

あぁ、きっと目に涙が浮かんでいる。

 

そう実感した。

 

社会人になって、現在の部署に異動して初めての感覚だった。

 

自分は今どういう感情なんだろう。

 

そう考えているうちに、別の学生がやってきた。

 

今の表情のままではいけない。

 

切り替えなければいけない。

 

そんなことがあった今日一日。

 

 

 

強くならなければ。